佐賀農家の日々

佐賀県伊万里市で便利になった世の中で、手間のかかるストレスフリーの平飼いで外国産の餌に頼らないこだわりの餌作りを行っています。

【友達追加】で お得なクーポン配布中
友だち追加

役員報酬0円、年収100万円。それでも会社を作った25歳の話

> 【まとめ】25歳で大企業の内定を蹴り、年収100万円・役員報酬0円で会社を立ち上げた佐賀の養鶏家が、その決断の根っこにあった「おばあちゃんへの思い」と「田舎への覚悟」を語る。 朝5時、鶏舎に向かいながら、ふと4年前の自分を思い出すことがある。役員報酬0円。年収100万円。「会社の作り方」をGoogleで検索していた25歳の自分を。 --- > この記事では、25歳で会社を立ち上げた素ヱコ農園代表・松本啓が、大企業内定を蹴った理由と起業の泥臭い現実について語ります。結論は「思いだけで始めた、それだけだ」です。 --- 今は2026年3月。素ヱコ農園が株式会社になって、ちょうど4年が経った。 2月や3月になると、僕は毎年少し感慨深くなる。春の雨が続く佐賀の田舎で、あの頃の重さを思い出す。華々しい起業ストーリーじゃない。泥船で沖に漕ぎ出した話だ。 --- ## おばあちゃんがいたから、田舎にいたかった 僕は中学・高校の6年間、祖母・末子ばあちゃんと二人で暮らした。 ばあちゃんは口数が少なくて、でも優しくて、僕が帰ると必ずご飯が用意してあった。高校進学のとき、外に出るという選択肢もあった。でも、ばあちゃんと一緒にいたかった。それだけで田舎に残ることを選んだ。 だから今の会社名は「素ヱコ農園」だ。「素ヱコ」はばあちゃんの名前から取っている。大げさな理念じゃない。一緒に暮らしてくれたばあちゃんへの、ただそれだけの感謝だ。 大学を卒業するとき、周りはみんな東京や福岡に出ていった。大企業の内定を持って、年収の高いところへ。それが正解のレールだった。僕にも大企業の内定はあった。でも、蹴った。 理由は単純だ。田舎でやりたかった。ばあちゃんのそばにいたかった。それだけだ。 --- ## 農業では食えないと気づいた日、養鶏が始まった 就農してすぐ、現実が見えた。 ばあちゃんは長年、水菜と米を作っていた。何十年もかけて作り上げた農業だ。でも、ばあちゃんが生活できているのは年金があるからだった。農業の収入だけで言えば、月に数百円の世界だ。これを一緒にやったところで、僕には暮らしていけない。正直、絶望に近かった。 でも、そこで諦めるという選択肢は、なかった。 衰退していく田舎を目の前にして、何かやらないといけないという焦りが先にあった。田んぼが耕作放棄されていく。店が閉まっていく。若者が出ていく。年々、じわじわと消えていく景色を見ながら、「でも仕方ない」とは思えなかった。 歴史が好きな僕は、昔の若者たちのことをよく考えていた。血気盛んで、社会を変えようと燃えていた人たちのことを。翻って今の僕らはどうか。冷めていないか。「どうせ」と諦めていないか。 そんな問いを抱えながら、たどり着いたのが平飼い養鶏だった。 鶏は雑食だ。農園の余剰物も食べる。環境負荷を下げながら、質の高い卵を作れる。衰退していく田舎でやる意味がある農業だと感じた。養鶏農家に1週間研修させてもらい、耕作放棄された金柑畑のハウスを手作りで改修し、鶏を飼い始めた。 ゼロからだった。土地なし、金なし、経験なし。本当に何もなかった。 --- ## 「一緒に働きたい」という言葉の重さ 養鶏を始めて2年が経った頃、卵の味が安定してきた。「これなら売れる」という手応えが出てきた。 そのタイミングで、友人が言ってくれた。「面白そうだし、一緒に働きたい」と。 その言葉が、どれだけ重かったか。 僕は田舎を衰退から救いたかった。でも、一人でできることには限界がある。田舎を変えるには仕事を作らないといけない。仕事を作るには、若い人たちが田舎で元気に働ける環境を作らないといけない。それが僕の中にずっとあった問いだった。 だから、その言葉は単なる嬉しさじゃなかった。責任の重さだった。 当時の僕の年収は100万円だった。アルバイトで生計を立てながら、農業をやっていた。そんな状態で人を雇えるわけがない。頭では分かっていた。でも、「一緒にやりたい」という気持ちも本物だった。 悩んで、当時アルバイトでお世話になっていた社長に相談した。「彼を一緒に雇ってもらえないか」と。情けない話だと思う。でも、それが当時の精一杯だった。 その社長に言われた言葉が、今でも刺さっている。 「誰の顔を見て働けばいいか分からないじゃないか。彼は松本君と一緒に働きたいって言ってるんだから、君が頑張らないとダメだよ」 その通りだった。覚悟が足りなかっただけだ。 --- ## 役員報酬0円。泥船で沖に出た日 2022年、25歳。会社を作ることにした。 会社の作り方は知らなかった。「会社 設立 方法」で検索した。freeeの会社設立サービスが出てきて、言われるままに情報を入力した。公証役場、法務局、税務署。聞いたことのない場所ばかりだった。でも、言われた通りに書類を出し、言われた通りにお金を振り込んでいったら、会社ができた。 両親に頭を下げてお金を借りた。100万円で株式会社を立ち上げた。 役員報酬は0円にした。従業員に給料を払う余裕はあっても、自分への報酬を設定する余裕はなかった。そうしないと数字が回らなかった。 社会人経験なし。人の下で働いたことなし。給料が払えないから役員報酬0円。お金もない、経験もない、余裕もない。どこから見ても泥船だった。 それでも、思いだけはあった。田舎を何とかしたい。若者が田舎で元気に生きていける場所を作りたい。その思いだけで始めた。それだけだ。 以前[学習し続けるチームにしたい](https://saga-nouka.com/entry/2025/07/04/064846)という記事でも書いたが、僕は自分のことを大胆だと思ったことは一度もない。ただ、学びながら前に進んでいただけだ。あの頃も同じだった。分からないことだらけで、でも、止まる理由もなかった。 友人が正式に入ってくれたのは2022年の4月。会社ができてから2ヶ月後のことだ。 田舎を盛り上げる本当の第一歩だと思った。泥臭い、情けない、でも本物の第一歩だった。 --- ばあちゃんは喜んでくれた。 「あさとし、一緒に暮らしてくれるんだね」と言って、笑ってくれた。 それで十分だった。 --- **思いだけで始めた。それだけだ。でも、その「だけ」が一番重かった。** --- あれから4年が経った。鶏は2,000羽になった。卵はミシュラン三つ星のレストランに届くようになった。クラウドファンディングで累計1,100万円を集めた。 でも、あの役員報酬0円の朝から地続きに、今がある。 レールを降りた先に、ちゃんと景色があった。美化するつもりはない。泥だらけの景色だ。でも、悪くない。 この4年間をどう生き延びてきたか。それはまた次の話で。 --- ### よくある質問 **Q. 農業で起業するのにいくら必要ですか?** A. 僕の場合、会社設立の資本金として両親から100万円を借りました。ただし、その前の養鶏場の整備や鶏の購入費用は別途かかっています。クラウドファンディングも活用し、累計1,100万円を調達しました。初期費用は規模や業態によって大きく異なりますが、「お金がないからできない」は必ずしも正しくないと思っています。 **Q. 大企業の内定を蹴って後悔しませんでしたか?** A. 正直、後悔する暇がなかったというのが本音です。目の前のことをやるだけで精一杯でした。今振り返っても、あの選択は間違っていなかったと思います。ただ、誰にでも勧めるつもりはありません。覚悟がなければ続かない道です。 **Q. 田舎で起業しても若者は集まりますか?** A. 集まります。ただし、「仕事があること」と「その仕事に意味があること」の両方が必要だと感じています。うちに来てくれた最初の仲間も、給料の高さじゃなく「一緒にやりたい」という気持ちで来てくれました。詳しくは[新しいメンバーとの面談](https://saga-nouka.com/entry/2024/08/27/224307)も読んでみてください。 --- 🐔 素ヱコ農園の「ばあちゃんの昔ながらのたまご」はこちら → https://suecofarm.com?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 📻 ポッドキャストで毎日の裏側を配信中 → https://www.spreaker.com/show/6886334?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 💬 LINE登録で裏話が届きます → https://lin.ee/otoWN5v?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio

農業4年目、宮崎で気づいた「自然は人工物だ」という逆説

> 【まとめ】農業体験の価値が高まるAI時代、佐賀の養鶏農家が宮崎のアグリツーリズム視察で得た「自然は手入れされているから美しい」という哲学と、観光農園構想への覚悟を語る。 観光農園に必要なのは、豊かな自然でも広大な土地でもない。「デザイン」だ。手入れされていない自然は、ただの荒れ地でしかない。 --- > この記事では、宮崎アグリツーリズム視察を通じて見えた「体験価値」の本質と、農業4年目の僕が観光農園に本気で向き合い始めた理由を掘り下げます。結論は「自然は人工物である」という逆説が、農業経営の核心だということです。 --- ## 同世代の農家が、宮崎で目をキラキラさせていた きっかけは、クラウドファンディングだった。 スクロールしていたら、「日本で唯一のカカオ栽培に挑戦する20代農家」という一文が目に入った。迷わず支援ボタンを押した。理由なんてない。「こんなことやってる奴がいるのか」という純粋な驚きと、同世代への応援。それだけだ。 そのリターンが、宮崎のアグリツーリズム体験ツアーだった。 正直なところ、観光農業は自分には関係ない話だと思っていた。佐賀の片田舎で2,000羽の鶏を相手に毎日泥まみれになっている僕が「観光」を語るのは、どこかちぐはぐな気がしていた。でも参加してみて、その認識は根底から覆された。 宮崎で会ったのは3組の農家だった。放牧養豚、自然栽培、カカオ栽培。全員20代。全員、道なき道を切り開いている途中だった。 全員、目をキラキラさせていた。 いろんなものと戦いながら、それでも理想を掲げている。完成してるわけじゃない。むしろこれからのところも多い。でもその「途中」の熱量が、画面越しじゃなく肌で伝わってきた。こういう人たちが日本にいる。それだけで、なんか明るい気持ちになった。 **同世代の農家が本気でいる。それだけで、日本の農業は捨てたもんじゃない。** --- ## 豚が一気に寄ってきた瞬間、「体験」の価値を確信した 防護服を着て、消毒を済ませて、放牧養豚の現場に足を踏み入れた。 次の瞬間、豚の群れが一斉にこちらへ向かってきた。 普段、僕は2,000羽の鶏と毎日接している。動物の迫力には慣れているつもりだった。でも、あの瞬間は本当に怖かった。足がすくんだ。豚ってこんなに大きいのか。こんなに元気なのか。こんなに近くに来るのか。 これだ、と思った。 この「怖い」という感覚は、どんなに精巧な映像でも、どんなに上手い文章でも再現できない。豚の体温、鼻息、地面を蹴る音。全部ひっくるめた「圧」は、その場にいなければ体験できない。 自然栽培の農場も圧巻だった。広大な土地に、機械もでかい。親父さんが慣行農業から自然栽培へ転換し、息子さんが観光農園として開いていく。畑の脇でその野菜を食べることを想像したら、ここで食う野菜は絶対に美味いだろうと確信した。 カカオ栽培の現場では、カカオ豆を実際に口にした。むちゃくちゃ美味かった。「チョコレートってこういう豆から来るのか」という当たり前の事実が、食べた瞬間に初めてリアルになった。 しかもカカオ豆は、収穫まで3年かかる。発酵設備を自前で整えなければ、豆を作ってもチョコにできない。それでも挑戦している。その覚悟の重さが、豆の味と一緒に身体に入ってきた。 AIがどれだけ進化しても、この感覚は代替できない。 農業と生活の距離は、これからもっと広がっていくだろう。食べ物がどこから来るか知らない子供が増え、土を触ったことがない大人が増える。だからこそ、「生の体験」は希少資産になる。体験の価値は、便利になればなるほど上がる。逆張りに見えて、これは必然だ。 以前[宮崎で見た「農業の未来」が僕の養鶏場を変える](https://saga-nouka.com/entry/2026/03/10/091644)でも書いたが、アグリツーリズムの可能性を感じてから、僕の農業観は確実に変わってきている。今回の視察は、その確信をさらに深めた。 --- ## 「自然は手入れされているから美しい」という逆説 視察を終えて、ずっと頭の中に残っている言葉がある。 **自然は、人工物だ。** 以前読んだ本で知った考え方だ。盆栽は手入れされているから美しい。日本庭園の苔は、管理されているから美しい。誰も手を入れなければ、庭は荒れ、木は腐り、ただの藪になる。「自然のまま」は、美しくない。 観光農園をつくるとき、多くの農家がここで躓くと思う。「うちには自然がある」「動物がいる」「広い土地がある」。それだけでは足りない。 体験を「デザイン」しなければ、ただの農場見学になる。 お客さんが想像する「農業体験」の期待を超えないと、リピートは生まれない。また来たい、友達を連れてきたい、あそこにいると落ち着く。そういう感情を設計する必要がある。美的センスのある人間が入って、空間をちゃんと作り込む必要がある。 それには、お金がかかる。 正直、今の素ヱコ農園の設備では難しい。直売所も養鶏場もある。小さく始めることはできるかもしれない。でも「小さく始める」だけでは、お客さんの期待を超えられないと思っている。期待を下回った体験は、むしろブランドを傷つける。 だから今すぐやらない。利益をしっかり積み上げ、銀行から融資を引っ張り、ちゃんと「想像を超える場所」を作る。中途半端にやるより、一発で期待を超える。それが僕の方針だ。 [日本で唯一のカカオ栽培を見て「農業観光」の可能性に震えた話](https://saga-nouka.com/entry/2026/03/10/115936)でも触れたが、農業観光の成功条件はコンテンツの豊かさだけじゃない。「デザイン」と「利益」を両立できるかどうかだ。 --- ## 4年目の夢は、膨らんでいる 鶏は毎日世話が必要だ。1日でも空けることは、簡単じゃない。餌やり、健康チェック、採卵。それが365日続く。 今回、1日宮崎に行けたのは、スタッフのみんながいてくれたからだ。本当に感謝している。そして家を空けた1日、3人の子供を一人で見てくれた妻にも。 支えてもらっているから、外に出られる。外に出るから、視野が広がる。視野が広がるから、夢が膨らむ。 農業を始めて4年が経った。最初の頃は、とにかく生き残ることで精一杯だった。土地なし、金なし、経験なし。耕作放棄された金柑畑のハウスを手作りで改修して、クラウドファンディングで資金を集めて、ゼロから始めた。 あの頃は、観光農園なんて夢にも思っていなかった。 でも今は、思っている。本気で。 **やりたいことが膨らむ4年目というのは、悪くない。むしろ、最高だと思う。** レールを降りた先に、こんな景色がある。 --- ### よくある質問 **Q. 観光農園を始めるにはどれくらいの資金が必要ですか?** A. 規模や設備によって大きく異なりますが、「お客さんの期待を超える」クオリティを作るには相応の初期投資が必要です。小さく始めることより、一発で期待を超えることを優先すべきだと考えています。 **Q. アグリツーリズムとは何ですか?農業体験と何が違うのですか?** A. アグリツーリズムは農業を軸にした観光体験の総称で、単なる収穫体験にとどまらず、農家の暮らし・食・自然環境を包括的に体験するものです。「農場に来る」だけでなく「農業の世界に入り込む」体験設計が重要です。 **Q. 平飼い養鶏場でも観光農園はできますか?** A. 可能だと思っています。鶏と触れ合う体験、卵を産む現場を見る体験は、子供から大人まで強烈な印象を残します。ただし、衛生管理とデザインの両立が課題です。素ヱコ農園でも将来的に実現したいと本気で考えています。 --- 🐔 素ヱコ農園の「ばあちゃんの昔ながらのたまご」はこちら → https://suecofarm.com?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 📻 ポッドキャストで毎日の裏側を配信中 → https://www.spreaker.com/show/6886334?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 💬 LINE登録で裏話が届きます → https://lin.ee/otoWN5v?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio

スーパーの卵が安すぎる。その「安さ」の正体を、農家が語る

> 【まとめ】1個120円の平飼い卵を「高い」と言われ続けた29歳農家が、業界平均7万羽という数字を使って日本の卵の「安さ」の正体を暴き、消費は投票だという思想に辿り着くまでを語る。 朝、鶏舎の扉を開けると、2,000羽が一斉にこちらを向く。餌をやり、卵を集め、おからを仕込む。この繰り返しの中で、僕はずっと同じ問いを抱えてきた。「なぜ、卵はあんなに安いのか」と。 --- > この記事では、日本の養鶏業界の構造的な問題について、農家当事者の視点から掘り下げます。結論は「スーパーの卵の安さは、誰かへのしわ寄せで成り立っている」です。 --- ## 「高い」と言われ続けた4年間 創業から、丸4年が経った。 土地なし、金なし、経験なし。23歳で大学を卒業してそのまま農業を始めた僕は、ありとあらゆる方向から「難しい」「やめた方がいい」と言われてきた。批判の中で最も多かったのは、卵の値段についてだった。 「1個100円の卵が売れるわけがない」 正直、最初は苦戦した。それは事実だ。でも今、うちの卵はあるだけ売れる。全国1,000人近い定期便のお客さんが毎月注文してくれていて、北は北海道、南は沖縄まで届けている。一番多いのは月40個のコース。毎月40個、120円の卵を買い続けてくれる人たちが、全国に1,000人いる。 この4年で、何かが変わったのかもしれない。あるいは、最初から変わらなかった人たちが、僕たちを見つけてくれたのかもしれない。 どちらにせよ、感謝しかない。 ただ、感謝だけで終わらせたくない。この4年で僕が一番伝えたかったことを、今日はちゃんと書こうと思う。 **「安い卵」の裏側に、何があるのか。** --- ## 平均7万羽という数字が教えること 少し、業界の話をさせてほしい。 農水省のデータによると、日本の養鶏農家が平均で飼育している羽数は7万羽だ。7万羽。想像できるだろうか。 うちは2,000羽だ。その35倍である。 なぜ7万羽も飼わなければいけないのか。答えは単純で、1個あたりの利益が極端に薄いからだ。スーパーで売られている卵が消費者の手に届くまでには、GPセンター(洗卵・選別・包装の施設)、運送会社、卸業者、小売業者と、いくつもの中間が挟まる。その過程でコストが積み重なり、農家に残る利益は1個あたり5円から10円程度と言われている。 1個10円だ。 1日に1,000個とれたとして、売上は1万円。そこから飼料代、光熱費、設備の減価償却、人件費を引いたら、手元に何が残るか。だから7万羽飼わなければやっていけない。7万羽飼っても、経営が苦しい農家が多い。 これが現実だ。 では、その薄い利益の中でコストを削るには何を削るのか。飼育スペースを狭くする。鶏1羽あたりのコストを下げる。飼料を安くする。それが積み重なった結果が、スーパーに並ぶ1パック200円の卵だ。 **安さの裏側には、必ず誰かへのしわ寄せがある。農家かもしれない。鶏かもしれない。あるいは、その両方かもしれない。** 僕はそれを変えたくて、この仕事を始めた。 --- ## オランダで知った「投票」という消費の思想 なぜ僕がそこまでこだわるのか。原点はオランダにある。 大学生のとき、1年間オランダに留学した。農業先進国の現場を歩き回る中で、あるスーパーの棚に目が止まった。オーガニックのポテト、オーガニックのオレンジ、オーガニックの野菜。日本とは比べ物にならないほど、オーガニック製品が当たり前に並んでいた。 「なぜオーガニックを買うんですか?」 現地の人に聞いてみた。日本でオーガニックといえば、「健康にいい」「安心安全」「美味しい」というイメージが強い。きっと彼らも同じ理由だろうと思っていた。 返ってきた答えは違った。 「社会のためだから」「環境のためだから」「未来のためだから」 消費が、投票だった。 自分が何にお金を払うかが、どんな社会を作るかへの意思表示になっている。その感覚が、ごく普通の消費者の中に当たり前のように根付いていた。 僕は衝撃を受けた。そして、日本でもこういう消費の価値観を広げたいと思った。それが、今の仕事の根っこにある。 [以前「これから」という記事でも書いた](https://saga-nouka.com/entry/2025/05/18/215531)が、僕は農業でどうやって稼ぐかを考えるのが正直あまり好きじゃない。ピュアさがなくなりそうで嫌だからだ。でも、株式会社として利益は必要で、その矛盾の中でもがいている。それでも、消費を投票として捉えるこの思想だけは、ブレさせたくないと思っている。 --- ## 1個120円は、未来への投票だ うちの卵が高い理由は、手間にある。 平飼いという飼育方法は、日本では数パーセントの農家しかやっていない。鶏が広いスペースを自由に動き回れる環境を作るには、土地も手間も時間もかかる。餌も、地域で捨てられていたものを集めてきて使っている。豆腐屋のおから、醤油かす、漁師からのいりこくず、農家からの野菜くず、くず米、米ぬか。[豆腐屋のトラックを追いかけて「おからをください」と頭を下げた話](https://saga-nouka.com/entry/2026/03/10/210722)は、以前書いた通りだ。1軒1軒、直接交渉して、直接取引して、直接集めてくる。 その手間が、値段に乗っている。 [循環型養鶏の現場についての記事](https://saga-nouka.com/entry/2026/03/12/180603)でも触れたが、捨てられていたものを鶏の餌にすることは、単なるコスト削減ではない。どこかにしわ寄せを押し付けない、優しい繋がりを作ることだと思っている。まだ理想には程遠い。でも、その方向に向かっていることは確かだ。 **消費は投票だ。うちの卵を買うことは、こういう農業に票を入れることだ。** そう思ってもらえたら、1個120円の意味が少し変わって見えるかもしれない。 4年間、続けてこられた。それはひとえに、この価値観に共感して買い続けてくれた人たちのおかげだ。全国1,000人の定期便のお客さんが、毎月投票してくれている。その重さを、忘れないようにしたいと思う。 理想はまだ遠い。循環型農業も、もっとできることがある。でも、4年前に「そんな卵売れるわけがない」と言われた場所から、ここまで来た。 **レールを降りた先に、ちゃんと景色があった。** それだけは、胸を張って言える。 --- ### よくある質問 **Q. 平飼い卵はなぜ値段が高いのですか?** A. 鶏が自由に動ける広いスペースの確保、手間のかかる個別管理、地域の未利用資源を集めて餌にする手作業など、大量生産では省略されるコストをすべて積み上げているためです。1個あたりの手間が、そのまま値段に反映されています。 **Q. スーパーの卵との違いは何ですか?** A. 最大の違いは飼育環境と、その裏にある経営構造です。一般的な養鶏場は平均7万羽を飼育し、1個あたり5〜10円の利益で成立しています。その薄い利益の中でコストを削った結果が「安い卵」であり、そのしわ寄せは農家や鶏に向かっています。素ヱコ農園の卵は、そのしわ寄せをなくす方向を選んだ結果の値段です。 **Q. 定期便はどこから注文できますか?** A. 素ヱコ農園の公式ECサイト(suecofarm.com)から注文できます。月40個コースが最も人気で、全国1,000人近くが毎月注文しています。 --- 🐔 素ヱコ農園の「ばあちゃんの昔ながらのたまご」はこちら → https://suecofarm.com?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 📻 ポッドキャストで毎日の裏側を配信中 → https://www.spreaker.com/show/6886334?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 💬 LINE登録で裏話が届きます → https://lin.ee/otoWN5v?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio

80歳のおじいちゃんが「格好つけて生きたい」と言った日、僕は泣きそうになった

> 【まとめ】パーキンソン病を患う80歳の恩人が語った「無理することの価値」と「格好つけて生きる哲学」が、父の病気と親友の死を経験した29歳の養鶏家の死生観を揺さぶった記録。 毎年100万円を寄付し続ける80歳が言った。「無理するなよ、は楽なんだよ。でも俺は違う。」その言葉が、胸の奥に刺さって抜けない。 --- > この記事では、死を意識することが人をどう変えるかについて、80歳の恩人との再会と、父の病気・親友の死という個人的な喪失体験を軸に掘り下げます。結論は「格好つけて生きることが、命を燃やす唯一の方法だ」です。 --- ## 「無理するな」は優しい言葉じゃない 素ヱコ農園が5年目に入った。 創業当初からずっと気にかけてくれていた80歳のおじいさんが、久しぶりにうちの農園を訪ねてきてくれた。最近は疎遠になっていた。僕も仕事に追われていたし、向こうも忙しい人だった。 でも、向こうから来てくれた。 パーキンソン病を患っているという話を聞いた時、なんとなく察した。終わりが近くなると、人は会いたい人に会いに行くのだと思う。 その方は、伊万里の病院の先生だ。地元にとどまらず、福岡や海外にもクリニックを開いてきた、むちゃくちゃエネルギッシュな人物だ。創業した当初、まだ何もなかった僕に「夢が大事だぞ」「農業で食っていくのは大変だけどな」と言いながら、3日に1回会って話を聞いてくれていた。 その人が、80歳になった今も、毎年100万円を障害者支援施設に寄付し続けているという。 「去年も100万円寄付したら、向こうが涙流して喜んでくれてね。でも『無理しないでください』って言われたんだよ」 そこで彼は首を振った。 「俺は違うと思った。これは無理しないとダメなんだよ」 **無理することが、頑張るということだ。** 年金をもらいながら、80歳の体で、100万円を捻出する。それは客観的に見て「無理」だ。でも彼は言う。無理するから若々しくいられる。この100万円を寄付するという「格好つけるための目標」があるから、きつい体を動かせる。無理することをやめた瞬間、人は老いるのだと。 「俺はもう80やけど、格好つけて生きたいんだよ」 この言葉が、ずっと頭から離れない。 --- ## 死を意識した時、スイッチが入った 彼はこんなことも言っていた。 「人間は死を意識しないとダメだ。死を意識することで強くなる」 その言葉は、僕の中にすでにある何かと共鳴した。 親友を2人、亡くしている。 どちらも突然だった。昨日まで普通に話していた人間が、ある日いなくなる。その喪失の痛みの中で、僕は初めて「命が有限だ」ということを体ではなく、骨の髄で理解した。頭では知っていた。でも、知っていることと、感じることは全然違う。 親友を失ってから、スイッチが入った。もう1回やっていこう。やれることをやり切ろう。そう思った。 そして今も、父が3年近く寝込んでいる。 あんなに元気だった人が、ある日突然倒れた。仕事ができなくなった。喋れなくなった。いつどうなるかわからない状態が、ずっと続いている。 命というのは、本当にいつどうなるかわからない。 むちゃくちゃ元気だった人が、ある朝突然、全く違う人生を生きることになる。それを目の当たりにしてきた。だから、今日という日を使い切ることへの執着が、僕の中には人より少し強くあるかもしれない。 以前、知覧の特攻隊員たちの手紙を読んだことがある。20代の若者が、お母さんに手紙を書いて、死にに行く。「僕らが犠牲になることで、次の日本を平和にしたい」と書いていた。 **僕らは、そういう無数のバトンの上に立っている。** 命を燃やして次に繋いでくれた人たちの上に、今の僕がいる。そう思うと、この命の重さが変わる。受け取ったバトンを、どう次に繋ぐか。どう燃やすか。それを考えないで生きることは、なんか、できない気がする。 --- ## 格好つけて生きることが、農業の理由になっている 「格好つけて生きたい」という言葉を、最初は少し意外に感じた。 80歳のおじいさんが言う言葉として、もっと枯れた悟りみたいなものを想像していたからかもしれない。でも考えてみると、これは最も力強い生き方の哲学だと思う。 格好つけるというのは、見栄を張ることじゃない。「こうありたい」という理想を持ち続けることだ。美学を持つことだ。その美学のために、無理をすることだ。 僕が平飼い養鶏をやっている理由も、突き詰めるとそこに行き着く気がする。 土地なし、金なし、経験なし。祖母の末子ばあちゃんが一人で営んでいた耕作放棄地から始めた。クラウドファンディングで1,100万円を集めて、鶏舎を手作りで作った。[廃棄予定だったにんじん100キロを鶏の餌にする](https://saga-nouka.com/entry/2022/03/22/222353)ような、泥臭い循環を積み上げてきた。 なぜそこまでするのか、と聞かれることがある。 答えは、格好つけたいからだと思う。 衰退していく田舎で、捨てられていく地域の資源を活かして、地球にも動物にも人にも優しい農業をやる。それが「格好いい」と思っているから、やっている。お金の話をするより、生き方の話をするメンターたちに囲まれてきたから、自然とそういう価値観になっていった。 [豆腐屋のトラックを追いかけた29歳の告白](https://saga-nouka.com/entry/2026/03/10/210722)でも書いたが、廃棄されるおからを拾いに行くことを、恥ずかしいとは思わなかった。むしろ、それが格好いいと思っていた。循環させることの美学が、そこにあったから。 自分だけが幸せになることより、いろんな人に与えられる人間になりたい。恩返しをしたい。田舎を元気にしたい。そういう気持ちの根っこには、きっと「格好つけて生きたい」という衝動がある。 --- ## 格好よく死ぬために、今日を生きる 素ヱコ農園は5年目に入った。まだボロボロの船だ。この先どうなるかは、正直わからない。 でも、1つだけわかっていることがある。 **生きているうちは、とにかく人にいいことをしたい。格好つけて生きたい。そして、格好よく死にたい。** 80歳のおじいさんが、パーキンソン病を患いながら、それでも100万円を寄付するために今日も体を動かしている。夢を持て、ロマンを持て、念ずることが大事だ、と僕に伝えに来てくれた。 その人が若い頃に積み上げてきたものが、今の僕への言葉になっている。 僕も、いつかそういうバトンを誰かに渡せる人間になりたい。 受け取った命を、燃やし切って、次に繋ぐ。それだけだ。 格好つけることは、弱さじゃない。格好つけることが、人を強くする。80歳のおじいさんが、それを体で証明してくれた。 レールを降りた先に何があるかは、降りてみないとわからない。でも少なくとも、格好つけて生きようとしている人間が、ここにいる。それだけで、悪くない景色だと思っている。 --- ### よくある質問 **Q. 平飼い養鶏を始めるのに、どれくらいの資金が必要ですか?** A. 素ヱコ農園はクラウドファンディングで累計1,100万円を調達し、耕作放棄地の鶏舎を手作りで改修してスタートしました。初期費用は規模や設備によって大きく異なりますが、「土地なし・金なし・経験なし」でもゼロから始められることは、実際に証明されています。 **Q. 田舎での起業は、精神的に孤独になりませんか?** A. 孤独を感じる瞬間はあります。ただ、今回の記事で書いたように、地域の先輩や恩人との繋がりが精神的な支えになっています。お金の話より生き方の話をしてくれるメンターの存在が、田舎起業の現実を支えています。 **Q. 「格好つけて生きる」という哲学は、経営にどう活きていますか?** A. 利益だけを追うなら、もっと効率的な選択肢はたくさんあります。でも「地球にも動物にも人にも優しい農業をやる」という美学があるから、泥臭い循環型農業を続けられます。格好つけることが、長期的な経営の軸になっていると感じています。 --- 🐔 素ヱコ農園の「ばあちゃんの昔ながらのたまご」はこちら → https://suecofarm.com?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 📻 ポッドキャストで毎日の裏側を配信中 → https://www.spreaker.com/show/6886334?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 💬 LINE登録で裏話が届きます → https://lin.ee/otoWN5v?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio

捨てられるおからを卵に変える。循環型養鶏、泥臭い現場の話

> 【まとめ】佐賀の平飼い養鶏家が、豆腐屋・漁師・農家から「捨てられる食材」を集めて鶏の餌にする循環型農業の現場と、その手作り感あふれる泥臭い始め方を語る。 朝、おからの入ったコンテナに手を突っ込むと、中が熱い。前日に仕込んだ発酵おからが、一晩かけて40度近くまで温度を上げている。これが「ちゃんと発酵してる」サインだ。 > この記事では、素ヱコ農園が実践する循環型養鶏の「餌づくり」について、応用微生物学の知見と泥臭い現場の手作業という2つの視点から掘り下げます。結論は「質がいいのに捨てられるものが、最高の餌になる」です。 --- ## オランダ留学が教えてくれた「捨てる」という罪 23歳でオランダに渡った。 農業先進国の農場を歩き回って、僕が最も衝撃を受けたのは「技術の高さ」ではなかった。それは、資源の使い方への執着だった。生産の連鎖の中で「捨てる」という選択肢が、できる限り排除されている。廃棄物は次の生産の投入物になる。そういう設計思想が、農場のあちこちに組み込まれていた。 帰国して、祖母・末子ばあちゃんの農地で養鶏をゼロから始めることを決めた時、あの光景が頭にあった。どうせ田舎でやるなら、循環を作りたい。環境のことを考えた仕事がしたい。そう思った。 ただ、理想はきれいでも、現実はそうじゃない。 土地なし、金なし、経験なし。耕作放棄された金柑畑のハウスを手作りで改修して、クラウドファンディングで資金を集めて、鶏を迎えた。「循環型農業」という言葉の裏側にあるのは、そういう泥臭い手作業の積み重ねだった。 そして最初にぶつかった壁が「餌」だった。 --- ## Googleマップと軽トラで始めた、餌の調達劇 鶏は何でも食べる。魚も、米も、野菜も、豆腐の搾りかすも。この「雑食性」こそが、循環型農業との相性のよさだと気づいた。 地域には「未利用資源」が眠っている。人は食べないけれど、栄養価は高い。規格外だから売れない。腐りやすいから流通に乗らない。そういう食材が、あちこちで捨てられている。それを餌にすれば、地域の廃棄を減らしながら、鶏を育てられる。 理屈はわかった。でも、どこに誰がいるかが、まったくわからない。 豆腐屋の知り合いなんていない。漁師の知り合いもいない。農家との繋がりも、まだ薄かった。 だから、Googleマップを開いた。「豆腐屋 伊万里」で検索して、出てきた店に片っ端から電話をかけた。「おから、いただけませんか」と。 でも、Googleマップに載っていない豆腐屋もある。 ある日、運転中に軽トラが目の前に止まった。荷台に「豆腐」の文字が見えた。反射的にスマホで写真を撮って、車を止めて、走り寄った。 「さっきトラックを見たんですけど、豆腐屋さんですよね?おから、分けていただけませんか?」 おじさんは最初、怪訝な顔をした。当然だ。29歳の若造が突然走ってきて、廃棄物をくれと言うのだから。でも事情を話すと、表情が変わった。「うちもおからの処分に困ってるんだよ」と。 この話は以前[「豆腐屋のトラックを追いかけた29歳の告白」](https://saga-nouka.com/entry/2026/03/10/210722)でも書いたが、あの瞬間に循環の糸が一本つながった感覚は、今でも忘れられない。 漁師さんを探した時も似たようなものだった。海沿いの道をひたすら車で走って、船を見つけたら止まって話しかける。「いり粉のくず、ありませんか」と。 1件1件、手当たり次第に。それが、新規就農の現実だった。 --- ## 大学で学んだ応用微生物学が、田舎の養鶏場で活きた おからは腐る。 仕入れてから1日経つと臭いが変わり始め、2日経つとほぼ使えなくなる。せっかく集めても、鮮度が保てなければ意味がない。 ここで大学時代の記憶が蘇った。 佐賀大学農学部で学んだ「応用微生物学」。正直、当時はそこまで真剣に向き合っていなかった。でも、現場に立った時に、その知識が突然リアルになった。 おからに米ぬかを混ぜて、密閉状態にする。 これは「嫌気性発酵」と呼ばれるプロセスだ。空気に触れさせないことで、酸素のない環境でも増殖できる乳酸菌などの有益な菌が優勢になる。その菌が増える過程で熱が発生し、腐敗の原因となる雑菌が死滅していく。 ぬか漬けの原理と同じだ。素人にわかりやすく言えば「おからのぬか漬け」を作っている感じ、と言えばいいかもしれない。 翌朝、コンテナに手を入れると中が熱い。それが「ちゃんと発酵している」証拠だ。この熱の手触りが、僕にとっての品質チェックになっている。 学んだことは、いつか活きる。それだけは本当だと思う。 今は、おからだけでなく、農家さんからの米や野菜くず、漁師さんからのいり粉、醤油屋さんからの醤油かすも使っている。どれも「顔の見える人」から仕入れている。何が入っているかを僕自身がわかっている餌だ。 **「顔の見えない産業廃棄物」ではなく、「顔の見える循環資源」を使う。これが、うちの餌づくりのこだわりだ。** --- ## 「捨てられる」と「質が悪い」は、全然違う 勘違いされやすいのだが、「廃棄されるもの」と「質が悪いもの」は別物だ。 おからは、大豆の栄養がたっぷり残っている。タンパク質も食物繊維も豊富だ。捨てられているのは、「腐りやすいから流通に乗らない」という理由だけだ。漁師さんのいり粉も、農家さんの規格外野菜も、同じだ。品質は高い。ただ、いろんな事情で市場に出られないだけ。 **質がいいのに、捨てられている。それを餌にしている。** これが、うちの卵の「見えにくい価値」だと思っている。 豆腐屋さんは、おからの処分にお金がかかっていた。産業廃棄物として費用を払って捨てていた。僕らがもらうことで、その費用がなくなる。漁師さんも、捨て場に困っていたいり粉が、価値ある餌になる。 [「これから」](https://saga-nouka.com/entry/2025/05/18/215531)という記事の中で、「循環型農業を実現させて、農業の多面的な機能と、福祉や観光を絡めて、これからの世界に対してメッセージを発していきたい」と書いたことがある。その出発点が、この小さな餌づくりだと思っている。 Googleマップで豆腐屋を探して、走り回って、軽トラを追いかけて、海沿いで漁師に声をかける。そういう泥臭い手作業の先に、ウィンウィンの関係が生まれる。捨てられるはずだったものが、卵という価値に変わって、誰かの食卓に届く。 **鶏は、地域の廃棄物を卵に変える錬金術師だ。** 大げさに聞こえるかもしれない。でも、毎朝おからのコンテナに手を突っ込んで、その熱さを確かめるたびに、そう思う。 --- 6年前、土地も金も経験もなかった。循環型農業がやりたいという気持ちだけがあった。 今は、顔の見える豆腐屋さんと、漁師さんと、農家さんと、醤油屋さんがいる。彼らが「困っている」と言っていたものが、2,000羽の鶏の餌になり、1個120円の卵になって、銀座のレストランや誰かの朝ごはんに届く。 その連鎖を、一本ずつ手で繋いできた。 格好よくはない。でも、これが僕の仕事だ。そして、この仕事を選んでよかったと、今は心から思う。 レールを降りた先にも、ちゃんと面白いものがある。 --- ### よくある質問 **Q. 平飼い卵の餌にこだわると、卵の品質は変わりますか?** A. 変わります。鶏が食べるものが卵の味と栄養に直結するため、顔の見える地域食材を使った発酵飼料は、市販の配合飼料だけで育てた卵と風味が異なります。素ヱコ農園の卵のレビューが4.93/5.0を維持しているのも、この餌づくりが一因だと思っています。 **Q. おからを発酵させて鶏に与えるのは安全ですか?** A. 嫌気性発酵のプロセスで雑菌が死滅するため、むしろ生のおからより安全性が高まります。発酵によって有益な菌が優勢になり、腐敗菌が抑制された状態で鶏に与えています。大学で応用微生物学を学んだ知識が、この判断の根拠になっています。 **Q. 循環型農業に興味があるのですが、新規就農でも同じことはできますか?** A. できます。ただ、最初は「知り合いがゼロ」という現実があります。僕はGoogleマップで豆腐屋を検索し、走行中に軽トラを追いかけ、海沿いで漁師に声をかけるところから始めました。手作業で1件1件繋いでいくしかない。それが現実ですが、繋がれば必ずウィンウィンの関係になれます。 --- 🐔 素ヱコ農園の「ばあちゃんの昔ながらのたまご」はこちら → https://suecofarm.com?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 📻 ポッドキャストで毎日の裏側を配信中 → https://www.spreaker.com/show/6886334?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 💬 LINE登録で裏話が届きます → https://lin.ee/otoWN5v?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio

20代で600万円借りた。「借金は悪」という常識を捨てた日

> 【まとめ】資本金100万円・知識ゼロから始めた平飼い養鶏の1年目。融資600万円・赤字300万円という最悪の決算が、その後の事業基盤をつくった理由を赤裸々に語る。 創業1年目の決算書を税理士に見せたとき、数字はこうだった。売上3倍。赤字300万円。役員報酬0円。 > この記事では、資金ゼロから平飼い養鶏を起業した1年目の資金調達と融資の実体験について、「借金=悪」という常識が覆された瞬間を軸に掘り下げます。結論は「無理して人を雇い、借金してよかった」です。 --- ## 2ヶ月で底をつく。資本金100万円の現実 親から借りた100万円を資本金にして、会社を立ち上げた。 23歳だった。土地なし、金なし、経験なし。それでもやると決めた。 だが、現実はすぐに牙を剥いた。 平飼い養鶏というのは、とにかく先にお金が出ていく仕事だ。鶏の仕入れ、餌の仕入れ、養鶏舎の整備、卵を発送するためのパック。売上が立つより先に、出費だけが積み上がっていく。 そこに人件費が加わった。 「あと2ヶ月で会社のお金が尽きる。」 数字を見ながら、そう気づいた瞬間のことを今でも覚えている。焦りというより、静かな恐怖だった。売上はまだ小さい。でも支出は待ってくれない。 お金を借りるしかない。 ただ、問題があった。僕は20代前半で、事業でお金を借りた経験がまったくなかった。銀行のローンといえば、住宅ローンぐらいしか知らない。「どうやって借りるのか」すら、わからなかった。 だからGoogleで調べた。YouTubeで「お金の借り方」を検索した。 今思えば笑い話かもしれないが、あのとき真剣にYouTubeで融資の勉強をしたことが、すべての出発点だった。 --- ## YouTubeで融資を学び、翌週に窓口へ行った YouTubeの動画で「日本政策金融公庫」という名前を知った。 新規創業者や農業従事者への融資に積極的な、政府系の金融機関だ。動画では「まず最初に当たるべき場所」として紹介されていた。 すぐに調べて、最寄りの支店に電話した。 「300万円ほど借りたいのですが」と伝えると、「300万は難しいが、200万なら」という返答が来た。即日で融資が決まった。 正直、拍子抜けするほどスムーズだった。 でも300万が目標だったので、残り100万を探した。僕が住んでいる佐賀県伊万里市黒川町には、伊万里信用金庫の黒川支店がある。歩いていける距離だ。 窓口に行って「100万円貸してください」と言うと、担当者が少し驚いた顔をして「100万円でいいんですか?」と聞いてきた。 どうやら、もっと大きな金額を借りにくる人が多いらしい。「どうぞ」と即決だった。 こうして、資本金100万円に融資300万円を加えた、合計400万円でのスタートとなった。 **お金は、調べれば借りられる。知識がないことの方が、よっぽどリスクだった。** --- ## 赤字300万円・役員報酬0円。それでも「正解だった」と言える理由 融資を受けた後、従業員を一人雇った。 売上はまだ小さかった。当然、従業員に給料を払えば、僕の取り分はなくなる。だから役員報酬を0円にした。自分はアルバイトで運転手をして生活費を稼ぎながら、会社に全部注ぎ込んだ。 端から見れば、最悪の経営状況だったと思う。 でも、人が入ったことで、何かが変わった。 一人でやっていた頃、まったく進まなかった作業が、バーっと回り始めた。1+1が2になるどころか、3にも4にもなる感覚があった。鶏舎の整備、出荷作業、顧客対応。どれも、一人では回せなかったことが、形になっていった。 結果として、1年目の売上は前年比3倍になった。 赤字は300万円。税理士に相談すると「もっと借りた方がいい」と言われ、1年目が終わる頃には累計600万円の融資を受けていた。 決算書の数字だけ見れば、最悪だ。でも、あの1年がなければ、今の素ヱコ農園はなかった。 以前書いた[「貯金使ってるだけ」](https://saga-nouka.com/entry/2024/05/14/191302)という記事でも触れたが、創業期の赤字は「投資」だ。使っているのではなく、積み上げているのだと、今なら確信を持って言える。 --- ## 「借金は悪」という常識が壊れた日 起業するまで、借金はとにかくネガティブなものだと思っていた。 避けるべきもの。恥ずかしいもの。失敗のサインのようなもの。 でも、会社を経営し始めて、他の経営者たちと話すようになってから、その認識が根底から覆された。 **ほとんどすべての企業が、借金をしている。** それだけではない。「自己資本比率20%」という言葉を知ったとき、頭が真っ白になった。自分の資本が2割で、残り8割は借入金。それが「優良企業」の基準だというのだ。 逆説的に聞こえるかもしれないが、これは正しい。 成長するためにはお金が必要で、そのお金を自己資金だけで賄おうとすると、成長のスピードが著しく落ちる。融資を活用することで、自分の持っていないリソースを借りて、事業を前に進める。それが資本主義のルールだった。 農家はこのことを知らない人が多い、と思う。 正直、僕もそうだった。やりたいこと、作りたいもの、届けたい価値。そっちばかり考えていて、お金の仕組みには目を向けていなかった。でも、農業をやっている以上、経営者だ。お金の知識から逃げることはできない。 [「認識」](https://saga-nouka.com/entry/2024/12/08/202644)という記事でも書いたことがあるが、自分がいる状況を正しく把握することが、すべての出発点だ。「農業は儲からない」という空気に飲み込まれる前に、まず数字を見る。仕組みを知る。そこから動き方が変わる。 **借金は悪じゃない。知識のなさが、悪だ。** --- ## あなたは今、どんな「常識」に縛られているか 4周年を迎えた今、1年目を振り返ると、あの決断が正しかったと確信している。 融資を受けたこと。無理して人を雇ったこと。役員報酬0円で耐えたこと。 どれも、当時は怖かった。でも、やらなければ今はなかった。 [「また、長文のブログ再開します。〜農家ってそもそも稼げずに辞める人ばっかりじゃん〜」](https://saga-nouka.com/entry/2022/10/22/223313)でも書いたが、農業で食っていくことを周りに笑われた時期がある。就職した方がいい、農業を舐めてる、と言われた。 でも、そういう声の多くは「知らない」から来ている。 借金が怖い、起業が怖い、レールを降りるのが怖い。その怖さの正体は、たいていの場合「知識の欠如」だ。仕組みを知れば、怖さの半分は消える。 あなたが今、踏み出せずにいるのは、本当に無理だからか。それとも、ただ知らないだけか。 そこを問い直してみることが、最初の一歩かもしれない。 --- ### よくある質問 **Q. 農業で起業する場合、最初にどこから融資を受けるべきですか?** A. 日本政策金融公庫が最初の選択肢としておすすめです。新規就農者や農業法人向けの制度が充実しており、創業初期でも対応してもらいやすい金融機関です。まずは電話やWebで問い合わせてみることから始められます。 **Q. 創業1年目から従業員を雇うのはリスクが高くないですか?** A. リスクはあります。ただ、人を入れることで作業効率が上がり、売上成長のスピードが変わります。素ヱコ農園の場合、1年目に赤字300万円を出しながらも売上が3倍になり、その基盤が2年目以降につながりました。「今の売上で雇える」ではなく「雇うことで売上が伸びる」という視点の転換が重要かもしれません。 **Q. 農家がお金の勉強をするにはどこから始めればいいですか?** A. YouTubeや書籍で「融資」「自己資本比率」「キャッシュフロー」といった基本的な財務知識を学ぶところから始めるのが現実的です。税理士との定期的な対話も、お金の感覚を養う上で非常に有効です。知識を持つだけで、経営の選択肢が大きく広がります。 --- 🐔 素ヱコ農園の「ばあちゃんの昔ながらのたまご」はこちら → https://suecofarm.com?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 📻 ポッドキャストで毎日の裏側を配信中 → https://www.spreaker.com/show/6886334?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 💬 LINE登録で裏話が届きます → https://lin.ee/otoWN5v?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio

膝が悪い時に、デザインを磨くな。講演会で学んだ経営の本質3つ

> 【まとめ】中川政七商店と平川豆腐の講演会で気づいた「管理会計・経営理念・降臨思考」の3つの学びが、素ヱコ農園の経営をどう変えるかを正直に告白する記事。 --- ブランディングより先に、心臓を止めるな。29歳の経営者が、半日の講演会で突きつけられた言葉だ。 > この記事では、中川政七商店と平川豆腐の経営者講演から学んだ3つの本質について、素ヱコ農園の経営実態と照らしながら掘り下げます。結論は「利益を出す仕組みを作るまで、ブランディングは後回しでいい」です。 --- ## 管理会計ゼロだった。その告白から始める まず、正直に言う。 僕は今まで、管理会計をちゃんとやってこなかった。 株式会社スエコを経営して数年。養鶏部門と加工部門がある。毎月どれだけコストがかかって、どれだけ利益が出ているか。損益分岐点はどこにあるか。卵を何個売れば黒字になるか。——これらが、数字として明確に整理されていなかった。 恥ずかしい話だ。でも、これが現実だった。 今回、中川政七商店の中川淳さんと、同じ佐賀県で豆腐製造・販売を手がける平川豆腐の平川さんの講演会に参加した。両社とも、もともとは卸売り中心のビジネスモデルを、自社販売へと転換させてきた先駆者だ。素ヱコ農園もJAや市場を通さず直販にこだわっているという意味で、この2社の歩みは他人事ではない。むしろ、数年先を走っている「兄貴分」みたいな存在だと思っている。 その中川淳さんが最初に言ったのが、「経営において管理会計が第一だ」という話だった。 ブランディングも、いい会社づくりも、その先の話。まず利益を出すこと。そのために数字を徹底的に把握すること。これが経営の土台だ、と。 **利益なき理念は、ただの詩だ。** その言葉が、ぐさりと刺さった。 僕は「ばあちゃんの昔ながらのたまご」を銀座のミシュラン三つ星「ロオジエ」に届けたい、という想いで動いてきた。アニマルウェルフェアを実践したい。地方から食の価値観を変えたい。そういうビジョンは誰にも負けないくらい持っている。でも、その根っこを支える数字の管理が甘かった。 鶏2,000羽を飼育していて、1個120円の卵を売っている。では、月に何個売れれば固定費をペイできるのか。飼料代が上がったとき、損益分岐点はどこまでズレるのか。加工部門(プリンや焼き菓子)の粗利は養鶏部門と比べてどうか。これらを即答できない経営者が、「年間50万人を熱狂させる農園を創る」と言っている。 滑稽だとは思わないか。 だからこそ、講演会の帰り道に決めた。1週間以内に管理会計の仕組みを整える。3月13日までに全社に浸透させる。それと並行して、中川淳さんの本を最低3冊読み、「なぜ中川政七商店はここまで発展できたのか」を自分の言葉でレポートにまとめる。 [以前インスタのフォロワー3万人に近づいた話でも書いたが](https://saga-nouka.com/entry/2024/08/21/090610)、うちは認知度の勝負を直販でやっている。だからこそ、表に見える発信の裏側に、ちゃんとした数字の骨格が必要なのだ。 --- ## 「会社の理念」と「自分の理念」を分けていい 2つ目の学びは、少し意外なものだった。 中川政七商店の「日本の工芸を元気にする」、平川豆腐の「佐賀の豆腐文化を世界に」。どちらも素晴らしい経営理念だ。でも講演を聞きながら、僕はあることに気づいた。 この2人、自分の会社の理念に対して、「個人として」そこまで執着しているようには見えなかった。会社としては100%そこに向かっている。でも、個人の人生の核心と完全に一致しているわけではない——そんな印象を受けた。 最初は「あれ?」と思った。でも少し考えると、むしろこれは健全なのかもしれない、と感じた。 僕はずっと、「素ヱコ農園の理念=松本啓の理念」でなければいけないと思っていた。会社と自分を同一視することで、覚悟の深さを証明しようとしていた節がある。 でも、それは少し危うい。会社の理念は、チームや顧客や社会に向けたコミットメントだ。個人の理念は、もっと内側にある、生き方の軸のようなものだ。この2つを無理やり一致させようとすると、どちらかが歪む。 **会社の旗と、自分の魂は、別々に立てていい。** むしろ、個人の理念が「田舎で家族と自分らしく暮らす」ことにあるなら、それはそれで揺るがない軸として持っていい。そして会社の理念は、もっとチームが共有しやすい言葉で組み立てる。この分離を意識することで、むしろ両方が強くなる気がした。 29歳で3人の子供を育てながら、妻の美和さんとばあちゃんと一緒に暮らしているこの生活。満員電車もなく、上司の顔色もなく、朝は鶏の世話から始まり、夕方には家族と食卓を囲む。この暮らしを守ることが、僕個人の理念の核にある。それはどこまでいっても変わらない。 その土台の上に、会社の理念をもう一度ちゃんと組み直す。それが今の課題だと思っている。 --- ## 「膝が悪い時に、膝のリハビリをするな」という比喩が刺さった理由 3つ目の学びが、一番腑に落ちた。 講演の中で、こんな比喩が出てきた。 「整体師に『あなた膝が悪いですね』と言われたとする。でも、もし心臓が今にも止まりそうなら、膝より先に心臓を診るべきだ。ブランディングはその膝の話だ。みんな必要だし、いつかやらなければいけない。でも、心臓が悪い会社がまず取り組むべきは、ブランディングじゃない」 これは「公輪(顧客が触れる部分)」と「降輪(自分たちだけで完結する部分)」の話とも繋がっていた。ブランドイメージやデザインや見せ方は、お客さんありきで動く「全輪」の話。でも、業務プロセスや組織体制や財務管理は、自分たちだけでコントロールできる「降臨」の話だ。 後者から先に整えろ、ということだ。 [卵が足りなかった時期の話でも正直に書いたが](https://saga-nouka.com/entry/2024/08/24/180142)、うちはまだ「当たり前を当たり前にやること」の途中にある。猪の侵入、水道管の漏れ、飼料不足。一つひとつは些細に見えて、積み重なると経営の土台を揺らす。その「降臨」の部分が盤石でないうちに、どれだけ見せ方を磨いても、砂の上に城を建てることになる。 **心臓を先に診ろ。膝のリハビリはその後でいい。** この言葉を、僕は今の素ヱコ農園に向けて言い聞かせている。 --- ## 4時間の不在を、お釣り付きで返す 講演会に行っている間、スタッフたちは鶏の世話をして、お菓子を作って、会社を回してくれていた。僕が外で学んでいる間も、農園は止まらない。 その4時間分の価値を、絶対に会社のプラスに変える。むしろ、お釣りを出すくらいの成果を出す。そのための具体的な行動が、管理会計の整備と中川政七商店の研究だ。 ビジョンを語るのは好きだ。「年間50万人を熱狂させる農園を創る」という野望も、本気で持っている。でも今は、その野望を現実に変えるための地盤を固める時期だ。 土地なし、金なし、経験なしで始めた養鶏が、クラウドファンディングで累計1,100万円を集め、ミシュランの厨房に届くようになった。これは運じゃない。でも、ここから先の成長には、もっと精緻な経営の骨格が必要だ。 感覚と熱量だけで走れる距離には、限界がある。 あなたの会社の「心臓」は、今どんな状態だろうか。ブランディングの前に、診るべき場所があるかもしれない。 --- ### よくある質問 **Q. 管理会計と財務会計は何が違うの?** A. 財務会計は税務署や銀行など外部向けの数字整理。管理会計は経営者が意思決定するための内部向けの数字管理です。「どの商品が儲かっているか」「損益分岐点はどこか」を把握するのが管理会計で、中小企業ほど後回しにしがちです。 **Q. 平飼い養鶏は利益が出にくいって本当?** A. コストは確かに高い。飼育スペース、飼料の質、手間のかかる管理。でも、直販モデルで適正価格をつければ、利益は出せます。問題は「何個売ればペイできるか」を把握せずに走っているケースが多いこと。管理会計はそのためにこそ必要です。 **Q. 経営理念は創業者の個人の想いと一致させるべき?** A. 一致させようとしすぎると、どちらかが歪むことがあります。会社の理念はチームや顧客に向けたコミットメント、個人の理念は自分の生き方の軸として、分けて持つことも有効です。大切なのは、どちらも「本物の言葉」であること。 --- 🐔 素ヱコ農園の「ばあちゃんの昔ながらのたまご」はこちら → https://suecofarm.com?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 📻 ポッドキャストで毎日の裏側を配信中 → https://www.spreaker.com/show/6886334?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 💬 LINE登録で裏話が届きます → https://lin.ee/otoWN5v?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio