4年で気づいた「僕の力はほぼゼロ」という真実
> 【まとめ】創業4周年を迎えた29歳の平飼い養鶏家が、SNS4.4万フォロワーの裏にあった「妻が赤ちゃんにおっぱいをあげながらスマホを操作していた夜」を告白。成功の本質は戦略ではなく、人への感謝だった。
深夜、次男がおっぱいを飲みながら眠りかけている。妻の腕の中で。その同じ腕が、スマホを握っていた。
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> この記事では、素ヱコ農園の創業4周年を振り返りながら、SNS成長の真相と「自分の力はほぼゼロだった」という気づきについて、父として語ります。結論は「成功の秘訣は戦略じゃなく、人に恵まれていること」です。
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## 100万再生の裏にあった、あの深夜の光景
素ヱコ農園のInstagramフォロワーは今、4.4万人を超えた。一番再生されたショート動画は100万回以上。「SNSが強い農園」として認識してくださる方も増えてきた。
正直に言う。僕にSNS戦略なんてない。
コンサルに相談したことも、バズる投稿のフォーマットを研究したこともない。ただ自分たちがやりたいことを、ありのままに出してきただけだ。だからSNSが得意という感覚は、今も正直ないに等しい。
じゃあ、なぜ伸びたのか。
答えはシンプルで、少し胸が痛くなる話だ。
当時、農園のInstagramには1,000〜2,000人ほどのフォロワーがいた。そこに妻がバトンタッチして運用を引き継いだ。すると——1ヶ月でフォロワーが1万人になった。
妻がやったことは、凝った編集でも、バズり狙いのコンテンツ設計でもない。ただ、僕が書いていたブログの文章と、農園の昔の写真を組み合わせて、リール動画に仕上げてくれただけだ。
でも、そこには僕が見落としていたものがあった。
当時、妻は次男を産んだばかりだった。時間も体力も、もちろんない。それでも深夜、赤ちゃんにおっぱいをあげながら、もう片方の手でスマホを操作して、動画を編集していた。「ちょっとあともう少しだけ頑張るね」と言いながら。
僕が朝起きると、投稿にコメントが溢れていた。
**鶏は毎朝、卵で答えてくれる。妻は深夜、スマホで答えてくれていた。**
その光景を思い出すたびに、何かが込み上げてくる。感謝とも、申し訳なさとも、違う何かが。
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## 「いい時2割、悪い時8割」でも続けられる理由
創業4年を振り返ると、正直いいことばかりじゃなかった。
期待に応えられなかったこと。判断を誤ったこと。スタッフに余計な苦労をかけたこと。取引先への連絡が遅れたこと。数え上げればきりがない。いい時と悪い時の割合を自分なりに出すと、いい時が2割、悪い時が8割くらいだと思う。
それでも続けてこられたのは、なぜか。
ラジオで話しながら、自分で気づいた。人に恵まれているからだ。それだけだ。
妻だけじゃない。一緒に働いてくれるスタッフ。取引先の方々。応援してくれるお客さん。プリンや焼き菓子、卵のしずく——僕が「こんなの作りたい」と言い出したものを、形にしてくれているのはスタッフたちだ。お菓子づくりに僕はほとんど関わっていない。
僕はやりたいと言っているだけだ。
それを、周りの人たちがもっとすごい形で表現してくれている。
[「これから」](https://saga-nouka.com/entry/2025/05/18/215531)という記事でも書いたことがある。「農業でどうやって稼ぐか」を考えるより、自分が信じる未来に向かって動き続けることの方が大事だと。その感覚は今も変わっていない。でも4年経って、もうひとつ加わった。「信じる未来に向かって動き続けられるのは、人に支えてもらっているからだ」という確信だ。
**自分の力なんて、ほぼゼロだ。それを認めることが、逆に一番強い。**
佐賀県伊万里市。元々8万人いた人口が今は5万人を切っている。地元だけでは売れない。知名度もない。平飼い養鶏は日本の養鶏の数パーセントしかない、まだ珍しい飼い方だ。そんな「ないものづくし」の現実の中で、農園が続いてきた理由を突き詰めると、自分の戦略や努力より先に、人の顔が浮かぶ。
以前、[「豆腐屋のトラックを追いかけた29歳の告白」](https://saga-nouka.com/entry/2026/03/10/210722)でも書いたが、この農園はゼロから、本当に何もないところから始まった。土地なし、金なし、経験なし。おからをもらうために見知らぬトラックを追いかけるような日々から始まった。それが今、ミシュラン三つ星レストランに卵を届けられるようになったのは、自分が賢かったからじゃない。
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## なぜ平飼いなのか、という問いへの答え
4周年を振り返るついでに、よく聞かれることにも答えておきたい。
「なぜ平飼い養鶏を始めたのか」という問いだ。
大学時代、1年間オランダに留学した。向こうのスーパーには、普通の棚にオーガニック野菜が並んでいた。日本みたいに「健康意識が高い人が選ぶもの」という感じじゃない。「地球のため」「社会のため」という感覚で、ごく普通に選ばれていた。
食べることは投票だ、という感覚が、オランダには当たり前のようにあった。
それを見て、僕は思った。自分が仕事にするなら、自分が投票したい未来に向かうものがいい。平飼い養鶏は、鶏にとって優しい。地域でロスになっているクズ米やおからを餌にできる循環型農業だ。美味しい卵が生まれ、それが人の栄養になる。この一連の流れに、僕が信じる未来がある。
晴れた日に外に出て、体を動かして、鶏に囲まれながら働く。それが仕事だ。満員電車もない。上司の顔色もない。4歳と2歳と0歳の子供たちと同じ空の下で、末子ばあちゃんと同じ田舎で、妻と一緒に暮らしながら働いている。
**これがレールを降りた先の景色だ。泥だらけだけど、悪くない。**
もっとたくさんの人に、素ヱコ農園と関わることで人生が少し楽しくなったと思ってもらいたい。でも正直まだまだだと思っている。自分の未熟さを感じるからこそ、もっと頑張れる。そしてそれを支えてくれる人たちがいるから、続けられる。
4年間、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
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### よくある質問
**Q. 平飼い卵が高いのはなぜですか?**
A. 平飼いは鶏が自由に動き回れる広いスペースが必要で、飼育コストが通常の養鶏より大幅にかかります。素ヱコ農園では地域のクズ米やおからを飼料に活用するなど工夫していますが、それでも1個120円という価格は、鶏の福祉と循環型農業を守るための最低ラインです。
**Q. 農業未経験でも就農できますか?**
A. できます。僕自身、農学部卒業後に土地なし・資金なし・経験なしでゼロから始めました。ただし「なんとかなる」という楽観論より、「いい時2割・悪い時8割」という現実を受け入れる覚悟が先に必要だと思います。それでも続けられるのは、人に支えてもらえる環境を作れるかどうかにかかっています。
**Q. SNSで農園を広めるにはどうすればいいですか?**
A. 正直、戦略より「ありのままを出すこと」が一番だと思います。素ヱコ農園がフォロワー1ヶ月で1万人増えたのも、凝った編集ではなく、日常のブログと写真を組み合わせた素直な発信でした。ただしそれを形にしてくれたのは妻でした。一人でやろうとせず、信頼できる人と一緒に動くことが、結果的に一番強いと感じています。
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