日本で唯一のカカオ栽培を見て「農業観光」の可能性に震えた話
日本で唯一のカカオ栽培をやってる20代農家のクラウドファンディングを見つけた瞬間、僕は迷わず支援ボタンを押していた。理由?そんなものはない。ただ、「こんなことやってる奴がいるのか」という純粋な驚きと、同世代の農家への応援したい気持ちだけだった。
そのリターンが宮崎のアグリツーリズム体験だった。正直、観光農業なんて自分には関係ないと思っていた。佐賀の片田舎で2,000羽の鶏を相手に、毎日泥まみれになってる僕にとって、「観光」なんて遠い世界の話だった。
でも、この日帰りの宮崎ツアーが、僕の農業観を根底から変えることになる。
## 豚に囲まれて気づいた「体験」の圧倒的価値
防護服を着て、消毒を済ませて放牧養豚の現場に足を踏み入れた瞬間、僕は圧倒された。
豚たちが一斉にこちらに向かってくる。こんなに近くで豚と接したのは人生初だった。普段、鶏と接している僕でさえ、その迫力に思わず後ずさりしてしまう。怖いと思うほど元気で、生命力に溢れていた。
「これは凄い」
その瞬間、僕の中で何かが変わった。AIが進歩して、何でもスマホで済むようになって、食べ物がどこから来るのかも分からない時代だからこそ、この「生の体験」が持つ価値は計り知れない。
自然栽培をやっている農園は、想像を超える広大さだった。元々豪農だった家の息子が、父親の農法を自然栽培に転換し、今度は観光農園として人々に体験してもらう場を作っている。機械もでかい。土地もでかい。でも何より、その野菜を実際に畑で食べる体験の価値がでかい。
そして、日本で唯一のカカオ栽培。カカオ豆を食べた瞬間の衝撃は忘れられない。「こんなに美味いのか」。チョコレートになる前の、生のカカオ豆の味。発酵から乾燥まで、全ての工程を日本で完結させる挑戦。3年かけて実をつけるカカオの木。その間はイチゴ栽培で食いつなぐ。
どの農家も、20代で農業を始めて、道なき道を歩んでいる。でも全員、目をキラキラさせて未来を語っていた。
## AIが進むほど「手で触れる価値」が高まる理由
宮崎の空の広さ、海の近さ、強い波の音。晴れていたこともあって、気が良くて最高だった。こういう場所に住めたら楽しいだろうな、と心から思った。
でも、それ以上に感じたのは、これからの時代における「体験」の価値だった。
AIがどんどん便利になって、食事と生活、農業と生活がどんどん離れていく。スーパーで買う卵がどこから来るのか、誰も知らない。鶏がどんな環境で育っているのか、想像もしない。
だからこそ、実際に手で触れて、匂いを嗅いで、音を聞いて、味わう体験が、これまで以上に貴重になる。
僕が普段接している鶏も、都市部の人にとっては非日常そのものだ。2,000羽が一斉に鳴く声、羽ばたく音、独特の匂い。平飼いで自由に動き回る鶏たちの姿。卵を産む瞬間。雛が孵化する瞬間。
これらは全て、スマホの画面では絶対に体験できない。
## 3つの農家が教えてくれた「連携」の可能性
今回のツアーで最も印象的だったのは、放牧養豚、自然栽培、カカオ栽培の3つの農家が連携してアグリツーリズムを作り上げていることだった。
一人では限界がある。でも、同じ志を持つ仲間と組めば、一つの地域で完結する体験ツアーが作れる。宮崎という土地の魅力も含めて、農業の多面性を見せることができる。
同世代で、同じ目線で、同じ未来を感じながら熱く語り合える仲間がいる。これは本当に素晴らしいことだ。
佐賀の伊万里でも、同じようなことができるはずだ。僕の平飼い養鶏、近隣の米農家、野菜農家。連携すれば、都市部からの体験ツアーを受け入れることができる。
カカオ栽培の若い農家が語っていた言葉が印象的だった。「カカオ豆って、発酵させる設備まで整えて初めて作れるんです。日本には発酵済みの豆しか入ってこないから、僕らは一から全部やらないといけない」。
3年間、実がならないカカオの木を育てながら、イチゴ栽培で食いつなぐ。そんな挑戦を20代でやっている人がいる。この国は、まだまだ捨てたものじゃない。
## 「自然は手入れされているから美しい」という真実
ただし、観光農園をやる上で絶対に忘れてはいけないことがある。
以前読んだ小説で印象的だった一節を思い出す。「自然は極めて人工的だ」。日本庭園の美しい苔も、盆栽の見事な枝ぶりも、全て人の手が入っているから美しい。
誰も手入れしなければ、それは確かに「自然」だが、どんどん荒れて、腐って、見た目も悪くなる。
観光農園として人を受け入れるなら、ちゃんとデザインしなければならない。農家だけでなく、美的センスのある人がしっかりと入って、見せ方を考える必要がある。
お金もかかる。時間もかかる。でも、それだけの価値がある。
お客さんの期待を超える体験を提供する。「また来たい」「友達を連れてきたい」「ここに来ると落ち着く」。そう思ってもらえる場所を作るには、相当の覚悟と投資が必要だ。
## 素ヱコ農園の次の一手
帰りの飛行機の中で、僕は素ヱコ農園の未来を考えていた。
2,000羽の鶏たちとの日常。朝5時の鶏舎での作業。卵を集める瞬間の充実感。これらの体験を、もっと多くの人に提供できるはずだ。
特に、都市部で働く20代、30代の人たち。毎日満員電車に揺られて、上司の顔色を伺って、自分が何のために働いているのか分からなくなっている人たち。
そんな人たちに、鶏の鳴き声で目覚める朝を体験してもらいたい。卵を産んだばかりの温かい卵を手に取る瞬間を味わってもらいたい。
今の設備では、まだお客さんの期待を超えることはできない。でも、利益を出して、銀行から融資を引っ張ってきて、想像を超える観光農園を作ることはできる。
農業4年目の僕に、そんな夢が膨らんでいる。
## 支えてくれる人たちへの感謝
鶏は毎日の世話が必要だ。餌やり、健康チェック、卵の回収。1日でも空けるのは大変なことだ。
でも、スタッフのみんなが力を合わせてくれたから、今回の視察に行くことができた。3人の幼い子供たちを見てくれた妻にも、心から感謝している。
毎日の泥臭い作業の中で、時々こうして外の世界を見ることができる。新しい可能性に触れることができる。それは、周りの人たちの支えがあってこそだ。
宮崎で出会った20代の農家たちのように、僕も目をキラキラさせて未来を語り続けたい。観光農園という新しい挑戦に向けて、また一歩ずつ歩んでいこう。
レールを降りた先に、こんなに可能性が広がっているなんて、23歳で就農を決めた時は想像もしていなかった。
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