佐賀農家の日々

佐賀県伊万里市で便利になった世の中で、手間のかかるストレスフリーの平飼いで外国産の餌に頼らないこだわりの餌作りを行っています。

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20代で600万円借りた。「借金は悪」という常識を捨てた日

> 【まとめ】資本金100万円・知識ゼロから始めた平飼い養鶏の1年目。融資600万円・赤字300万円という最悪の決算が、その後の事業基盤をつくった理由を赤裸々に語る。 創業1年目の決算書を税理士に見せたとき、数字はこうだった。売上3倍。赤字300万円。役員報酬0円。 > この記事では、資金ゼロから平飼い養鶏を起業した1年目の資金調達と融資の実体験について、「借金=悪」という常識が覆された瞬間を軸に掘り下げます。結論は「無理して人を雇い、借金してよかった」です。 --- ## 2ヶ月で底をつく。資本金100万円の現実 親から借りた100万円を資本金にして、会社を立ち上げた。 23歳だった。土地なし、金なし、経験なし。それでもやると決めた。 だが、現実はすぐに牙を剥いた。 平飼い養鶏というのは、とにかく先にお金が出ていく仕事だ。鶏の仕入れ、餌の仕入れ、養鶏舎の整備、卵を発送するためのパック。売上が立つより先に、出費だけが積み上がっていく。 そこに人件費が加わった。 「あと2ヶ月で会社のお金が尽きる。」 数字を見ながら、そう気づいた瞬間のことを今でも覚えている。焦りというより、静かな恐怖だった。売上はまだ小さい。でも支出は待ってくれない。 お金を借りるしかない。 ただ、問題があった。僕は20代前半で、事業でお金を借りた経験がまったくなかった。銀行のローンといえば、住宅ローンぐらいしか知らない。「どうやって借りるのか」すら、わからなかった。 だからGoogleで調べた。YouTubeで「お金の借り方」を検索した。 今思えば笑い話かもしれないが、あのとき真剣にYouTubeで融資の勉強をしたことが、すべての出発点だった。 --- ## YouTubeで融資を学び、翌週に窓口へ行った YouTubeの動画で「日本政策金融公庫」という名前を知った。 新規創業者や農業従事者への融資に積極的な、政府系の金融機関だ。動画では「まず最初に当たるべき場所」として紹介されていた。 すぐに調べて、最寄りの支店に電話した。 「300万円ほど借りたいのですが」と伝えると、「300万は難しいが、200万なら」という返答が来た。即日で融資が決まった。 正直、拍子抜けするほどスムーズだった。 でも300万が目標だったので、残り100万を探した。僕が住んでいる佐賀県伊万里市黒川町には、伊万里信用金庫の黒川支店がある。歩いていける距離だ。 窓口に行って「100万円貸してください」と言うと、担当者が少し驚いた顔をして「100万円でいいんですか?」と聞いてきた。 どうやら、もっと大きな金額を借りにくる人が多いらしい。「どうぞ」と即決だった。 こうして、資本金100万円に融資300万円を加えた、合計400万円でのスタートとなった。 **お金は、調べれば借りられる。知識がないことの方が、よっぽどリスクだった。** --- ## 赤字300万円・役員報酬0円。それでも「正解だった」と言える理由 融資を受けた後、従業員を一人雇った。 売上はまだ小さかった。当然、従業員に給料を払えば、僕の取り分はなくなる。だから役員報酬を0円にした。自分はアルバイトで運転手をして生活費を稼ぎながら、会社に全部注ぎ込んだ。 端から見れば、最悪の経営状況だったと思う。 でも、人が入ったことで、何かが変わった。 一人でやっていた頃、まったく進まなかった作業が、バーっと回り始めた。1+1が2になるどころか、3にも4にもなる感覚があった。鶏舎の整備、出荷作業、顧客対応。どれも、一人では回せなかったことが、形になっていった。 結果として、1年目の売上は前年比3倍になった。 赤字は300万円。税理士に相談すると「もっと借りた方がいい」と言われ、1年目が終わる頃には累計600万円の融資を受けていた。 決算書の数字だけ見れば、最悪だ。でも、あの1年がなければ、今の素ヱコ農園はなかった。 以前書いた[「貯金使ってるだけ」](https://saga-nouka.com/entry/2024/05/14/191302)という記事でも触れたが、創業期の赤字は「投資」だ。使っているのではなく、積み上げているのだと、今なら確信を持って言える。 --- ## 「借金は悪」という常識が壊れた日 起業するまで、借金はとにかくネガティブなものだと思っていた。 避けるべきもの。恥ずかしいもの。失敗のサインのようなもの。 でも、会社を経営し始めて、他の経営者たちと話すようになってから、その認識が根底から覆された。 **ほとんどすべての企業が、借金をしている。** それだけではない。「自己資本比率20%」という言葉を知ったとき、頭が真っ白になった。自分の資本が2割で、残り8割は借入金。それが「優良企業」の基準だというのだ。 逆説的に聞こえるかもしれないが、これは正しい。 成長するためにはお金が必要で、そのお金を自己資金だけで賄おうとすると、成長のスピードが著しく落ちる。融資を活用することで、自分の持っていないリソースを借りて、事業を前に進める。それが資本主義のルールだった。 農家はこのことを知らない人が多い、と思う。 正直、僕もそうだった。やりたいこと、作りたいもの、届けたい価値。そっちばかり考えていて、お金の仕組みには目を向けていなかった。でも、農業をやっている以上、経営者だ。お金の知識から逃げることはできない。 [「認識」](https://saga-nouka.com/entry/2024/12/08/202644)という記事でも書いたことがあるが、自分がいる状況を正しく把握することが、すべての出発点だ。「農業は儲からない」という空気に飲み込まれる前に、まず数字を見る。仕組みを知る。そこから動き方が変わる。 **借金は悪じゃない。知識のなさが、悪だ。** --- ## あなたは今、どんな「常識」に縛られているか 4周年を迎えた今、1年目を振り返ると、あの決断が正しかったと確信している。 融資を受けたこと。無理して人を雇ったこと。役員報酬0円で耐えたこと。 どれも、当時は怖かった。でも、やらなければ今はなかった。 [「また、長文のブログ再開します。〜農家ってそもそも稼げずに辞める人ばっかりじゃん〜」](https://saga-nouka.com/entry/2022/10/22/223313)でも書いたが、農業で食っていくことを周りに笑われた時期がある。就職した方がいい、農業を舐めてる、と言われた。 でも、そういう声の多くは「知らない」から来ている。 借金が怖い、起業が怖い、レールを降りるのが怖い。その怖さの正体は、たいていの場合「知識の欠如」だ。仕組みを知れば、怖さの半分は消える。 あなたが今、踏み出せずにいるのは、本当に無理だからか。それとも、ただ知らないだけか。 そこを問い直してみることが、最初の一歩かもしれない。 --- ### よくある質問 **Q. 農業で起業する場合、最初にどこから融資を受けるべきですか?** A. 日本政策金融公庫が最初の選択肢としておすすめです。新規就農者や農業法人向けの制度が充実しており、創業初期でも対応してもらいやすい金融機関です。まずは電話やWebで問い合わせてみることから始められます。 **Q. 創業1年目から従業員を雇うのはリスクが高くないですか?** A. リスクはあります。ただ、人を入れることで作業効率が上がり、売上成長のスピードが変わります。素ヱコ農園の場合、1年目に赤字300万円を出しながらも売上が3倍になり、その基盤が2年目以降につながりました。「今の売上で雇える」ではなく「雇うことで売上が伸びる」という視点の転換が重要かもしれません。 **Q. 農家がお金の勉強をするにはどこから始めればいいですか?** A. YouTubeや書籍で「融資」「自己資本比率」「キャッシュフロー」といった基本的な財務知識を学ぶところから始めるのが現実的です。税理士との定期的な対話も、お金の感覚を養う上で非常に有効です。知識を持つだけで、経営の選択肢が大きく広がります。 --- 🐔 素ヱコ農園の「ばあちゃんの昔ながらのたまご」はこちら → https://suecofarm.com?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 📻 ポッドキャストで毎日の裏側を配信中 → https://www.spreaker.com/show/6886334?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio 💬 LINE登録で裏話が届きます → https://lin.ee/otoWN5v?utm_source=note&utm_medium=blog&utm_campaign=suecoradio