スーパーの卵が安すぎる。その「安さ」の正体を、農家が語る
> 【まとめ】1個120円の平飼い卵を「高い」と言われ続けた29歳農家が、業界平均7万羽という数字を使って日本の卵の「安さ」の正体を暴き、消費は投票だという思想に辿り着くまでを語る。
朝、鶏舎の扉を開けると、2,000羽が一斉にこちらを向く。餌をやり、卵を集め、おからを仕込む。この繰り返しの中で、僕はずっと同じ問いを抱えてきた。「なぜ、卵はあんなに安いのか」と。
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> この記事では、日本の養鶏業界の構造的な問題について、農家当事者の視点から掘り下げます。結論は「スーパーの卵の安さは、誰かへのしわ寄せで成り立っている」です。
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## 「高い」と言われ続けた4年間
創業から、丸4年が経った。
土地なし、金なし、経験なし。23歳で大学を卒業してそのまま農業を始めた僕は、ありとあらゆる方向から「難しい」「やめた方がいい」と言われてきた。批判の中で最も多かったのは、卵の値段についてだった。
「1個100円の卵が売れるわけがない」
正直、最初は苦戦した。それは事実だ。でも今、うちの卵はあるだけ売れる。全国1,000人近い定期便のお客さんが毎月注文してくれていて、北は北海道、南は沖縄まで届けている。一番多いのは月40個のコース。毎月40個、120円の卵を買い続けてくれる人たちが、全国に1,000人いる。
この4年で、何かが変わったのかもしれない。あるいは、最初から変わらなかった人たちが、僕たちを見つけてくれたのかもしれない。
どちらにせよ、感謝しかない。
ただ、感謝だけで終わらせたくない。この4年で僕が一番伝えたかったことを、今日はちゃんと書こうと思う。
**「安い卵」の裏側に、何があるのか。**
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## 平均7万羽という数字が教えること
少し、業界の話をさせてほしい。
農水省のデータによると、日本の養鶏農家が平均で飼育している羽数は7万羽だ。7万羽。想像できるだろうか。
うちは2,000羽だ。その35倍である。
なぜ7万羽も飼わなければいけないのか。答えは単純で、1個あたりの利益が極端に薄いからだ。スーパーで売られている卵が消費者の手に届くまでには、GPセンター(洗卵・選別・包装の施設)、運送会社、卸業者、小売業者と、いくつもの中間が挟まる。その過程でコストが積み重なり、農家に残る利益は1個あたり5円から10円程度と言われている。
1個10円だ。
1日に1,000個とれたとして、売上は1万円。そこから飼料代、光熱費、設備の減価償却、人件費を引いたら、手元に何が残るか。だから7万羽飼わなければやっていけない。7万羽飼っても、経営が苦しい農家が多い。
これが現実だ。
では、その薄い利益の中でコストを削るには何を削るのか。飼育スペースを狭くする。鶏1羽あたりのコストを下げる。飼料を安くする。それが積み重なった結果が、スーパーに並ぶ1パック200円の卵だ。
**安さの裏側には、必ず誰かへのしわ寄せがある。農家かもしれない。鶏かもしれない。あるいは、その両方かもしれない。**
僕はそれを変えたくて、この仕事を始めた。
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## オランダで知った「投票」という消費の思想
なぜ僕がそこまでこだわるのか。原点はオランダにある。
大学生のとき、1年間オランダに留学した。農業先進国の現場を歩き回る中で、あるスーパーの棚に目が止まった。オーガニックのポテト、オーガニックのオレンジ、オーガニックの野菜。日本とは比べ物にならないほど、オーガニック製品が当たり前に並んでいた。
「なぜオーガニックを買うんですか?」
現地の人に聞いてみた。日本でオーガニックといえば、「健康にいい」「安心安全」「美味しい」というイメージが強い。きっと彼らも同じ理由だろうと思っていた。
返ってきた答えは違った。
「社会のためだから」「環境のためだから」「未来のためだから」
消費が、投票だった。
自分が何にお金を払うかが、どんな社会を作るかへの意思表示になっている。その感覚が、ごく普通の消費者の中に当たり前のように根付いていた。
僕は衝撃を受けた。そして、日本でもこういう消費の価値観を広げたいと思った。それが、今の仕事の根っこにある。
[以前「これから」という記事でも書いた](https://saga-nouka.com/entry/2025/05/18/215531)が、僕は農業でどうやって稼ぐかを考えるのが正直あまり好きじゃない。ピュアさがなくなりそうで嫌だからだ。でも、株式会社として利益は必要で、その矛盾の中でもがいている。それでも、消費を投票として捉えるこの思想だけは、ブレさせたくないと思っている。
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## 1個120円は、未来への投票だ
うちの卵が高い理由は、手間にある。
平飼いという飼育方法は、日本では数パーセントの農家しかやっていない。鶏が広いスペースを自由に動き回れる環境を作るには、土地も手間も時間もかかる。餌も、地域で捨てられていたものを集めてきて使っている。豆腐屋のおから、醤油かす、漁師からのいりこくず、農家からの野菜くず、くず米、米ぬか。[豆腐屋のトラックを追いかけて「おからをください」と頭を下げた話](https://saga-nouka.com/entry/2026/03/10/210722)は、以前書いた通りだ。1軒1軒、直接交渉して、直接取引して、直接集めてくる。
その手間が、値段に乗っている。
[循環型養鶏の現場についての記事](https://saga-nouka.com/entry/2026/03/12/180603)でも触れたが、捨てられていたものを鶏の餌にすることは、単なるコスト削減ではない。どこかにしわ寄せを押し付けない、優しい繋がりを作ることだと思っている。まだ理想には程遠い。でも、その方向に向かっていることは確かだ。
**消費は投票だ。うちの卵を買うことは、こういう農業に票を入れることだ。**
そう思ってもらえたら、1個120円の意味が少し変わって見えるかもしれない。
4年間、続けてこられた。それはひとえに、この価値観に共感して買い続けてくれた人たちのおかげだ。全国1,000人の定期便のお客さんが、毎月投票してくれている。その重さを、忘れないようにしたいと思う。
理想はまだ遠い。循環型農業も、もっとできることがある。でも、4年前に「そんな卵売れるわけがない」と言われた場所から、ここまで来た。
**レールを降りた先に、ちゃんと景色があった。**
それだけは、胸を張って言える。
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### よくある質問
**Q. 平飼い卵はなぜ値段が高いのですか?**
A. 鶏が自由に動ける広いスペースの確保、手間のかかる個別管理、地域の未利用資源を集めて餌にする手作業など、大量生産では省略されるコストをすべて積み上げているためです。1個あたりの手間が、そのまま値段に反映されています。
**Q. スーパーの卵との違いは何ですか?**
A. 最大の違いは飼育環境と、その裏にある経営構造です。一般的な養鶏場は平均7万羽を飼育し、1個あたり5〜10円の利益で成立しています。その薄い利益の中でコストを削った結果が「安い卵」であり、そのしわ寄せは農家や鶏に向かっています。素ヱコ農園の卵は、そのしわ寄せをなくす方向を選んだ結果の値段です。
**Q. 定期便はどこから注文できますか?**
A. 素ヱコ農園の公式ECサイト(suecofarm.com)から注文できます。月40個コースが最も人気で、全国1,000人近くが毎月注文しています。
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